【最高のディナーを】

彼女は良家のお嬢様で、すでに誰もが知ってる一流会社のサラリーマンとの見合話も進んでいた。
俺達は、まだ付き合ってるわけでもなく、ただお互いに好意があるということは分かっていたんだ。
彼女がその見合話にあまり乗り気でないことも。

俺は彼女がそいつとどんなデートをしてるのか気になってどこへ行ったとか、どんな食事をしたとか、いろいろ彼女から聞いていた。
さすがはエリートサラリーマン。
高級フランス料理、料亭etc・・・。
俺にとっては絶望的とも思えるようないい店に行ってやがる。

俺達はといえば、ファミレス、ドライブスルー、コンビニ。
しかも、ワリカンの時もしばしばあった。
だんだん自分が情けなくなってきて、ある日、もう彼女と会うのをやめようと決心したんだ。

その事を伝えるために、最後に会うことになってドライブ。
最後のディナーは、マクドナルドのバリューセット。
眺めのいい場所で夜景を見ながら車の中で二人してモグモグ食ってた。
食いながら、もう会うのをやめようと俺が言ったんだ。

すると彼女がいきなり泣き出して
『どんな高い料理を食べるよりも、○○と一緒に食べる料理が一番おいしいもん。今こうして二人でいる時間が一番幸せだもん』って答えたんだ。

俺は、頭の中が真っ白になって、食いかけのハンバーガーを横に置いて彼女にキスをした。
ケチャップの味と、泣きかけの時の胸の奥のツーンとした感覚が混ざった変な味のキスだった。

そして彼女は親の反対を押し切って、そいつとの見合話を断り俺達は恋人として付き合うことになった。

それから6年。
俺も、たまには豪華なディナーをご馳走してやれるぐらいの稼ぎは出来るようになった。
でも俺達の結婚記念日は、毎年洒落た場所での豪華なディナーじゃなくて、あの日と同じ場所で車の中でマクドナルドのバリューセットと決めている。

あの日から変わったことといえば、車が少し広くなったことと、俺達の間に今年3歳になる生意気だが、かわいいガキが座っていることぐらいか。来年の結婚記念日にはどうやらもう一人ガキが増える予定。

仕事なんかで辛い時、苦しい時は必ずあの日のしょぼいディナーを思い出す。
思い出の食事ってやつは、決して金の問題じゃないんだよな。


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