【セブンスター】
姉は中学校の頃からセブンスターを吸っていた。
私と7個年の離れた姉は、私と双子の妹が10歳の頃から、家庭の事情で自分の事なんて放り出してずっと一人で私達を育ててくれた。
母は元々体が弱い人で、私達双子を産むときに死んでしまったそうだ。
母が死んでからは父が私達を育ててくれた。
その父は私が9歳の時に仕事をクビになり、中卒で就職した姉の給料だけを頼りに生活していた。
でももちろん姉の給料だけでは足らず、生活保護などの知識は全くなかったため、うちの家計は苦しいどころか借金まみれになっていった。
姉は普段の事務職の他に、コンビニで深夜バイトに入った。
姉には休みなんかなかったんじゃないかな。
そんな状態の中、父が倒れた。脳梗塞だった。
命は助かったが後遺症が残り、右半身が動かなくなってしまった。
姉は毎日満足に寝ないまま仕事へ行き、休みの日には私たちを連れて父の所へ連れてってくれた。
毎日仕事で大変なのに、家事もご飯作りも全部やってくれた。
くわえ煙草で料理をする姉の姿はいつも見ていた。
私と双子の妹によく優しくしてくれた。
姉と話せるのは朝、学校に行くまでの2時間だけだったがすごく楽しかった。
そんな状態が続き、私たちが中学2年になってすぐ、2度目の脳梗塞で父が死んだ。
それからも姉は私達の学費や生活費を稼ぐために一生懸命働いてくれた。
私達はなんの不自由もなく地元の短大ではあったが、大学も卒業させてくれた。
在学中は私も妹もバイトして、姉がコンビニで働かなくてもいいようにと、自分たちの学費分だけでもと、一生懸命働いた。
姉の25歳の誕生日には2人で初めての誕生日プレゼントを渡した。
あまり高いものではなかったけど、マッサージチェアをあげた。
すごく喜んでくれてうれしかった。
大学を卒業した年、双子の妹が結婚した。
相手はとても優しそうな人で、よく家に遊びに来ては姉の手伝いをしてくれた。
私は卒業後すぐに地元の幼稚園で働きだした。
その幼稚園で同じ保育士として働いていた今の旦那と3年後に結婚した。
久しぶりにみんなで会い、お酒を飲んだ時、姉は酔っぱらって、煙草を吸いながらこんな事を言った。
「アンタ達2人とも、やっと結婚してくれたからやっとお姉ちゃんも身を固められるよ。」と。
詳しく聞くと、この時連れてきていた男の人と、16歳の時から付き合ってたって。
父も大変な事になり、私たち2人がちゃんと大人になって結婚しない限り、私一人では幸せになることなんか出来ないとずっと彼氏を待たせて、私たちを見守っていてくれたようだ。
私と妹は大きな声で泣いてしまった。
今まで姉は、愚痴も泣き言も言わず、いつも笑顔で私たちを支えてくれた。
ずっと姉に頼ってばかりだった。
そんな姉も今はいそいそと結婚に向けて準備している。
もちろん、くわえ煙草で。
いつの間にかセブンスターはホープのメンソールになっていた。
これまで姉はどれだけの不安と愛情で私達を育ててくれたんだろう。
どれだけの自分を無駄にして私達を笑顔にしてくれたんだろう。
姉に怒られたり、笑わされたり、たくさんいろんな事があったけど、これからは私達がお姉ちゃんを支えて行くからね。
10年もお姉ちゃんのそばにいてくれた、旦那さんと幸せにね。
お姉ちゃん、結婚おめでとう。
ここまで育ててくれてありがとう。
お姉ちゃん、大好きです!
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