【昭和30年代の話】

まだテレビが高級品で裕福な家にだけ普及し始めたころ。

主人公の少年タケシはテレビを観るために
友達のトオルの家に毎日のように遊びに行っていた。

そこでトオルは「俺がおまえの上に馬乗りになる、そしたらテレビを見せてやる」
とタケシに命令した。タケシはテレビを見るために仕方なく馬乗りをされながら
テレビを見ていた。どうしても見たい番組があったから仕方なかった。

タケシは父に「とうちゃんテレビを買ってくれよお」としつこく頼むのだが
彼の父は「だめだ、だめだ」と許してくれない。
ある日、タケシが自宅に帰ると信じられないことが。

テレビが家にあるのだ。母がニコニコしながら出迎えた
「よかったねえタケシ。とうちゃんに良く礼を言うんだよ」

「ありがとう、とうちゃん」
父はいつもどおり不機嫌な顔で酒を飲みながら「ああ」と
ぶっきらぼうにうなずいた。

その夜、タケシは興奮して眠れなかった。そして考えた。

「あれほどケチで頑固なとうちゃんがテレビを買ってきたのはどういう
風のふきまわしだろう?とうちゃんもホントはテレビが欲しかったのかな?」
次の日、タケシはシンジを家に誘った。

「おまえんちはテレビなかっただろ。俺の家には昨日からあるんだ。観にこいよ」
シンジと共に帰宅したタケシはシンジに命令した。「テレビを観るあいだは、俺の
馬になれ」。
シンジの上に乗りながらテレビを観るタケシ。

突然、タケシの父がやってきて、タケシを殴った。
父は真っ赤な顔をして立っていた。

「なんで殴るんだよ。俺だってトオルの家でテレビを観るときは
馬になってたんだよ」。父は何も言わず出てった。

母がポロポロ泣きながらタケシに言った。
「とうちゃんは仕事の帰り、おまえがトオルくんの家で馬になってるのを見たんだ。それでテレビを買ってきたんだよう。」


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